「WEB」と「紙」の相互理解

「WEB」と「紙」の相互理解 (c) PHOTO / TARO YOSHIMOTO 2011

(c) PHOTO / TARO YOSHIMOTO 2011

編集プロダクション、あひる社の吉本真一さんと、チャットを使ってお話をした。
大まかなテーマとして「編集」にまつわる話ができれば…なんて思っていたのだが、そこは本職の編集者、慣れないチャットでうまく話をまわせるだろうかなんて心配は、結果的にリードしてもらうことで問題なく解決していた。さすがだ。
逆に寺沢の方が多めにしゃべっている気もしないでは無いが、まぁ、その、次回がんばります…

ということで、チャットでのお話スタート。
 

吉本:お疲れ様です!こちらはいつでも大丈夫です。

寺沢:では、よろしくおねがいします!

吉本:こちらこそ、よろしくお願いします!

 

寺沢:吉本さんのあひる社は、編集プロダクションという位置づけだと思うのですが、実際のところ、本や雑誌を出す時に、どういう仕事をされるんですか?

吉本:さっそく本題ですね。

寺沢:すみません、なんか慣れない感じで…

吉本:いえいえ。ではお答えします。

寺沢:はい。

 
吉本:「中身」をつくってます。最近はみなさん「コンテンツ」って言ってますよね。それです。

寺沢:実際の「記事」の部分ということですね?

吉本:そうですね。

寺沢:出版の方も「コンテンツ」って言うんですね。

吉本:ああ、これってやっぱりコンピュータの世界からの影響ですね。すごいなー。

寺沢:以前、音楽のことをネット関係の人が「コンテンツ」と呼ぶのは嫌いだと言う風な文章を見たことがあります。

吉本:ああ、わかります。すごく同意。

「WEB」の世界に取り入れるべき「紙」の世界の「ノウハウ」

寺沢:作業としては、全体にふわっと「こういう内容を作って」と言われて作るんですか?それとも細かい指示をもらって組み込んでいくような感じなんですか?

吉本:ああ、いい質問ですね。寺沢さんのお仕事とも似てますよね。

寺沢:この辺、さじ加減というかが、WEBだとバラバラなんですよ。

吉本:それって、どういう意味ですか?「WEBだとバラバラ」って。気になる!

寺沢:バラバラというか、ちぐはぐというか…ですね。全体のイメージができていないのに細部を考えてみたりとか、逆に、おまかせな割りに実は明確なイメージがあったりとか。
進め方、交通整理を、ちゃんとしないで作ってしまって、後でおかしくなるような感じです。
紙は、もう少しちゃんと作法のようなものが決まってるのかなぁと思うんですけど、そんなことないですか?

吉本:いやー、すごく面白いお話ですね。共通点がすごくありますよ、こっちの世界とも。

寺沢:あれれ、そうなんですか。

吉本:今の寺沢さんのお話だと、実際に手を動かして作る人と、全体の進行を図る人が登場してますね。

寺沢:そうですね。

吉本:それを1人ですることが多いから、だから大変なのかもですね。

寺沢:そこ、分業しないんですか?人員の問題で分業できないケースももちろんあると思うのですけど…

吉本:「分業」! そうそう。「分業」! そこにすごく面白いテーマが潜んでますよ!

寺沢:どこで分けるか?という問題はWEBでは結構ずっと課題ですね。刻々と技術が変わっていくので、誰がどこまでやるかの領域が日々変わったりしてるのです。

吉本:あーなるほどですね。我々の業界が、長いことやってきたゴタゴタが、そちらの業界にも発生しているんですね。

寺沢:試行錯誤をやり直している、まではいかないけれど、同じ道を進んでいるような感じでしょうか。

吉本:今、寺沢さんから聞いて、まさに「やり直し」だと思いました。実際、WEBの記事作成のお仕事も多いのですが、WEBの方々って、紙媒体の編集の世界にある「ノウハウ」をご存じないなー、とは思いますね。

寺沢:あーやっぱりそうですか。なんとなく、先行してきた業界だから「ノウハウ」があって、でも、それをそのままWEBに持って行くことは出来なくても、精神性というと言い過ぎかもですが、ベーシックな部分については、習う部分が多いんじゃないかなーと思っているんですよね。
ただ、僕も含めて、紙の業界を経由していないと、それが何かよくわからないという感じですね。ないがしろにするつもりは無いのですが、そこで齟齬が生じてるかも、と。

吉本:うわー。今日のお話めちゃくちゃ面白いです!異種格闘技…異種格闘技というよりも、なんか未知との遭遇…ちがう!まあええですわ(笑)

寺沢:たしかに異種格闘技っぽい部分はありますね。

「コミュニケーション能力」は「訓練」だ

吉本:今日はたぶん、バスケットボールを使って、ハンドボールをするような感じかもです。

寺沢:なんとなく、お互いで間合いを測りつつ、さてどうしようか?みたいな感じですね。

吉本:そうですね。

寺沢:ただ思うのは、吉本さん、話を聞くのがすごく上手いと思うんですよ。それが職業柄なのかどうかはわからないですけど、言葉を引き出す技術というか能力は、すごいなぁと思うんですよね。

吉本:ありがとうございます!もっと言って(笑)

寺沢:なので今日は、ボールを持たされているような感じがしてます。やはり、それは職業柄みたいな部分はあるんですか?もしくは、それが生かせる職業ということなんでしょうか。

吉本:こちらの業界にも、インタビューというか、対面によるコミュニケーションを嫌がる人はいますよ。どこの世界も同じですよ。だから、職業柄というよりは、この世界に入る前からの「訓練」ですかね。

寺沢:意識してやってきたことなんですか?

吉本:はい、高校生くらいのときから。

寺沢:それはすごい!

吉本:暗い思春期を送った人なら、だれでもそうなんじゃないですか?

寺沢:僕は昔からおしゃべりだったので、逆に人の話を聞く側にまわるのが苦手で、それがコンプレックスとまで言わないですけど、嫌でした。

吉本:そうなんですね。それは簡単な「訓練」で治りますよ、別に「病気」じゃないですが…

寺沢:そうなんですか!よかったら教えてください。

吉本:いつでも!あとで「傾聴法」とかググってみるといいかもです。あとは体育会系の会社の社員研修とか、勉強になりましたよ。

寺沢:なるほど、勉強になります。

「WEBってほとんど独り言」ひとり編集者について

吉本:話を元に戻しますと、今回の寺沢さんの営み(このサイト)って、「WEBをつくってる側」と「紙をつくってる側」の相互理解ですよね。共通点を見つけあいながらの。そして着地点は、「結局どの世界もおんなじだー!」ですよね。

寺沢:あんまり意識してなかったですけど、確かにそうですね。深く相互理解が進めば「コンテンツ」が軽い言葉にならないで済みそうな気がします。WEBは新興で、過去の技術の上を行く部分が多いので既存の物事をないがしろというか、軽く見るというかな部分があって、それは違うだろうと思ったりしているんです。

吉本:うわー、めっちゃ面白いこと考えてますね!

寺沢:ありがとうございます!今、チャットしていて気づいたのですけど、WEBって他メディアやリリースからの転載を除くと、ほとんどの記事が独白かそれに近いものなんだなと思いまして。SNSでもブログでも。
こうやって、お話したことが記事になっていく、記事にしていく作業をする、ということ自体が、それはそれで面白いことかも、と思ったりしてます。

吉本:「(WEBって)ほとんどの記事が独白かそれに近いもの」というご指摘は、鋭いですね。
実は、WEBだけに掲載されている文章(ブログとか)に僕らからみて面白い記事が少ないと思う理由は、そこにあるんですよ。WEBで面白い文章を書くコツは、まさにそこですよ。

寺沢:今までの出版は、独白をばらまくことは難しかったですよね。WEBはその反動なのかも知れませんけれど、今までやってきた「編集」という分野が機能しないというか、新しい機能が必要なのかの模索も含めて、今はまだ必要とされる機会が少ないのかもなぁと思うんです。

吉本:なるほど、実に面白いご指摘です!

寺沢:「編集」って言葉は、みんな耳にしたことはあるし、何となくわかっているけれど、実際にどういうこと?というのが見えないというか。今までの出版物は、程度の差はあれ、何かしら「編集」されているんですよね?

吉本:良い流れです!このチャット。
編集って、なんかオシャレでかっこいい言葉ですが、実はみなさん全員が「編集」をしてるんですよ。
例えば、ツイッターに「さっきテレビで見たラーメン屋に行きたい」とつぶやくことも、「テレビ」に映し出された「画面情報」から、その人は「ラーメン屋」の部分を「抜き出して」、自分の感想として世間に流布している。
これって、まさに「編集」ですよね。一人編集者。

寺沢:うわー、確かにそうですね!

吉本:そうなんです。一億総編集者!

寺沢:その編集した成果物を広く公にすることが誰でも出来るようになってきたということですね。

吉本:そうなんです。そこで、差が出てくるんですよね。
よく読まれるブログと、そうではないもの。フォロワーの多い人と、そうじゃない人。すべてその人の「編集能力」が決め手だと思います。

寺沢:確かにそうですね。個人メディアというのは、つまりそういうことなんですね。出版では、それを複数でやったり、持ち回りでやったりできてクオリティを維持したり、みたいなことをやっているという感じでしょうか。もちろん、名物編集者という人もいらっしゃるわけで。

吉本:そうですね。一人でやるよりも、みんなで協力した方が良いものを「つくりやすい」のは事実ですね。
ただ、さっきお話に出た「分業」ですよ!ナイフエッジカレス!
混沌としたものを、効率の名のもとに切り分ける。それが「分業」のスタートラインだと思うのですが、そもそも切り分ける必要ってあるのか?とも思うのです。あまり細分化しない方がいいと思うんです。

カメラ・トーク/Flipper's Guitar

カメラ・トーク/Flipper’s Guitar

TBSのドラマ主題歌からはじまる、Flipper’s Guitar最大のポップアルバム。
偶然のナイフ・エッジ・カレスは、9曲目に収録されている。


寺沢:細分化して、くっついて…は何度も繰り返される感じですね。分業ありき、というのは、たしかに乱暴かもですね。実際問題、一人でこの分量は…というのは別として。

吉本:そうそう、ボリュームは、しかたないですよね。一日どんなに頑張っても21時間くらいしか働けないですよね。

寺沢:吉本さんのところは、一人で出来るところまでやる、みたいな感じなんですか?

吉本:フリーランスの時代はそうでした。でも会社組織にしてからは、みんなでやってます。
まだ僕は「人に仕事を頼む」のが下手なんですが…

「積極的にネットを使うことはしない」という選択肢

寺沢:余談ですが、きへいた先生のブログや、それを紹介した僕のブログ。「あひる社 吉本」で検索した結果からアクセスしてくる人がたまにいます。

吉本:へえーーーー!意外です。すごいなー。

寺沢:編集という仕事も含めて、吉本さんの存在が「謎の人」みたいな感じなのかも知れません。

吉本:ツイッターとか、やってないからかなー?

寺沢:「あひる社」というのもあるかもですね。それでネットにはあまり情報が無いので、余計に謎めいた感じになるのかも知れません。

吉本:そうかもですね。「あひる社」かもですね。でも「ネットに全ての情報があるわけじゃない」って、素敵ですよね。僕もこのまま、「ネットに載っていない謎」になりたいですね。
なんかこれからは、「ネットに情報がない有名人」というのがカッコイイ時代ですよね。小沢健二さんも、そんな感じです。

寺沢:ネットを好き/嫌いとは別の軸で選択するという考え方は、まだあんまり広まっていないと思うんですよ。でも、積極的にネットを使うことはしない、という選択もあっていいわけですよね。

寺沢:そういえば、次回のボーイ・ミーツ・ガール、ゲストだそうで。

吉本:そうなんですよ。よろしければお越しください。
4月の16日(土) です。そのイベントで「GROOVE TUBE」のPVを撮影しようかな、って考えてます。パロディで。

寺沢:楽しみにしています(笑)

 

吉本:まだまだ、しゃべり足りない、というかチャットし足りない部分もありますが、腹八分目ということで。

寺沢:そうですね。また、機会があればお願いします。すごい勉強になりました。ありがとうございます。

吉本:いや、こちらの方こそ。寺沢さんの目を通じて、「異世界」をのぞかせていただきました。すごくエキサイティングでした。ありがとうございました。