9月3日(火)2013-09-03

9月3日(火)

引き続き暑い。夕方本当にちょっとだけパラパラ降って、余計に蒸した。

トリハルさんとも話をしたあまちゃんがいよいよ佳境で目が離せない。色々な人が色々な事を言っているので、便乗して思うことを書いてみる。

このドラマは沢山の小ネタやオマージュに彩られ、どこまで考えられているか推測出来ないくらいに伏線が絡み合った物語だけど、大きな大きな、大きすぎて目にはいらないような形で「過去との和解・修復。歴史の継続性。」というテーマが存在していると思う。

ドラマには多くの過去を持ったキャラクターが登場する。

アイドルになりたくて家出した娘、その母親、その娘を思い続ける男、その男と一時期結婚していた女性、海で子供をなくした夫婦、駆け落ちをして海外まで逃げた女、東京でパッとしなかった娘、その娘を思う東京からすぐに逃げ戻った息子、その息子や家族を捨てて蒸発する母、アイドルの卵を潰してしまった男、その男に拾われたバンド崩れ、結果的にアイドルの卵を潰す原因になった女性。
今の言葉でいえば「黒歴史」を抱える人が沢山出てくる。

小さいエピソード、大きいエピソード、ドラマが進む中で過去のわだかまりが少しずつ解決していき、登場人物の中にある、無かったことにしておきたい過去をしっかり自分の人生の一部として取り戻して行くという話になっている。
黒歴史が歴史に、無かったことにしたい過去が自分の歴史に戻っていく。
人生相談で「親孝行していますか?」と尋ねるのは鉄板の質問だというが、それと同じようにきっと多くの人が何かしらもっている過去のしがらみを、こうやってちゃんと向き合って修復していきたいと思わせるところが、このドラマが受けている一因じゃないか思う。
あまちゃんに影響されて久しぶりに実家に連絡してみたり、借りていたゲームのカセットを返すように古い友達に会ってみようと考えた人は結構いるんじゃないだろうか。

人と人の話だけでは無い。

春子が家出をした日は北三陸鉄道が開通し、これからは地方の時代、都会から人が来るという大きな夢が存在していた。それが今では廃線を噂されるまでの状況になり、車は通るが人は歩いていない街になってしまっている。

繁栄した東京と衰退した地方の問題。

これからどうしていくのか、まちおこしについて何度も会議が開かれる。地元アイドルを生み出してひとまず成功するものの、若い娘にいつまで頼っているのか?若い娘の将来を潰すのか?問われる場面が出てくる。(言及されないものの春子の事件を想起させるものだ)

地方から上京していった人間、残った人間、どちらにとっても放っておいて見えない振りをしていた問題であり、どこに住んでいても日本という国で本当はもっと真剣に考えなければならなかった問題を、かなりストレートに出している。
こちらは解決するに至っていないけれど、脚本や演出の力で面白おかしくオブラートに包んでいるものの、今まで真剣に自分の事として考える余裕がなかった人の心の中にまで届くくらいに、大きなメッセージとして打ち出されているし、上述したように昔の友達に連絡しようか考えたりすることから、何かが変わっていくんじゃないかなと期待する。

そして震災。今週は3月11日の震災から話がスタートしている。

大吉とユイの目に映ったものは、今までの人生に存在していたものが消失してしまった光景であるし、あるはずだった過去も未来も無くなってしまったという現実なのだろう。
地元から上京するといっても、その地元が壊れてしまったという現実。
まちおこしで頑張るべき場所がどこにも無くなったという現実。
時間と共に進んでいく人生がどこに向かうのかさえ分からなくなった瞬間だということは良く分かる。

きっとこのドラマでは震災で壊れてしまった、無くなってしまった場所も、それもまた歴史の一つとしてそこで切らしてしまうのではなく、それも含めて紡いでいこうとするのでは無いだろうかと思っている。
少なくともここまでのドラマではそれをやってきた。
夏ばっぱがメールでよこした「御すんぱいねく」「お構いねぐ」の言葉は、過去を気にかけるより、未来へつないでいって欲しいという願いなのでは無いかと思う。

あとしばらく話は続く、予想通りに進むのか、そうで無いのか、どちらにせよ物語が楽しみだ。