トーキョー自立日記を出版するトリバタケハルノブさんと話をした 1/2

トーキョー自立日記を出版するトリバタケハルノブさんと話をした 1/2
先日、むつみ荘101号室(第2部)を完結させ、新刊「トーキョー自立日記」の出版を目前に控えているトリバタケハルノブさん(通称:トリハルさん)とお話をした。むつみ荘101号室にまつわる裏話やあまちゃんの話などなど、書いても良さそうな部分を抜き出してまとめてみた。

トーキョー自立日記

トーキョー自立日記 – トリバタケハルノブ

「トーキョー無職日記」の続刊。
むつみ荘101号室(第2部)を最後までを収めている。
アフターストーリーの描き下ろしも収録。


本当は500話で終わらせる予定だったんですが

寺沢: 600話で終わらせる予定だったんですか?

トリハル: 本当は500話で終わらせる予定だったんですが。

寺沢: 100話延びた。

トリハル: その前は300話で。

寺沢: ズルズルと(笑)

トリハル: マンガを描いていて上手くなってきている感覚があって。ちょっと細かく描写してみようかと思って。

寺沢: 元のプロットは変わらずで膨らんでいったんですか?

トリハル: そうなんですよ。なので最初の頃は展開が早いんです。

寺沢: 後半の方は気を持たせるような描き方があったりですね。

トリハル: 最初はネタをそのまま出したような感じで、後半になって段々ストーリーや会話を描くのが楽しくなってきて。どんどん延びていく。

寺沢: マンガらしくなっていったというか。

トリハル: そうなんですよ。同じようなことを何回も何回も描いて。

寺沢: ジャンプ的な感じというか(笑)

トリハル: 日常ってそんな感じじゃないですか。同じことを繰り返してちょっとずつという感じ。そのままやると同じこと描いちゃうし難しいものだなぁって。

寺沢: それをあからさまなマンネリにせず。

トリハル: 「あー前もこんなことを思った」みたいな。

寺沢: そのへんは実際にやってみないと分かんないですよね。

トリハル: 分かんないですね。

寺沢: 学校の授業で「作者はこの時何を思っていたか」とか、実際に描くことを想像して考えると面白いですね。「この回とこの回はほぼ同じエピソードであるが、なぜそういう風になっているか考えよ」とか。

トリハル: そうそう(笑) 「トーキョー無職日記」はあとからついたタイトルですが、ストーリーも無職で上京してきて、また無職に戻るという。

寺沢: それは最初から考えていたんですか?

トリハル: 考えてました。

挫折か成功のどっちかだけじゃない上京物語

トリハル: 上京物語ってものすごい挫折するか、成功するかじゃないですか。描く時に思っていたんですけど別に(挫折か成功の)どっちかだけじゃない話を描きたいなぁと思ってはじめたので。

寺沢: 今はわかりやすい刺激を求めているじゃないですか。ハッピーエンドでもなんでも、もっともっともっと!みたいな。スッと終わるのは、商売的な感覚では押し出しが弱いですけど、流行るかどうかとは違う軸で存在する、いい話だと思うんですよね(笑)

トリハル: ありがとうございます(笑)

寺沢: ただ本屋さんが棚に置く時にどこに置くか悩むとは思うんですよね。

トリハル: それは僕も思います。

寺沢: 「俺はまだ本気出してないだけ」とかの近くとかですかね。

俺はまだ本気出してないだけ 1

俺はまだ本気出してないだけ 1 – 青野 春秋

実際、下北沢のビレッジバンガードでは近い所に置かれていた。

本屋さんで見つけられない時は勇気をだして店員に聞いてみよう。
きっとトリハルさんが喜んでくれると思う。


トリハル: 「なんなんだろうなこのマンガは」って自分でも思いますからね。恋愛マンガでもないし、特に引きがあるキャラクターがあるわけでも無いので、確かに売りにくいだろうなぁって。

寺沢: 商売の取っ掛かりとしては、そんなに強くない。

トリハル: 「ブログ」「実録」みたいなところで。実録でも無いっていう(笑)

寺沢: 実話を元にしたフィクション(笑)

トリハル: 「何年も同じマンガを繰り返し読んでるんです」と言われる喜びと、でも売れない、でも売れて欲しいという気持ちがあるじゃないですか。それは複雑だなぁって思って。ずっと何回も繰り返して読んで、こういうこと思ってたなとか、そういうマンガになると良いなぁというのがあるんですけど、沢山の人に読まれるものじゃないなって分かるんですよ、描いていて。

寺沢: クライマックスに向かって進む話の筋を追うというよりは、このエピソードが面白いとか、そういう風な読み方をすればいいんじゃないかなって思うんですよね。どう読むかは人それぞれですけど、最後がどうなったかを語るマンガじゃあない気がするんですよね。日常として終わって欲しくなくて、ずーっと続くような。

トリハル: あーなるほど。ただ生活がありますからね(笑)

寺沢: 途中で自然消滅で止めちゃってもいいかな、とか思うことはありました?

トリハル:うーん、何度かありました。でも、その度にやっぱり続けようと思うような出来事もあって。震災とかもそうですし。

寺沢: 終わらせるってのは大事だと思うんですよ。形にすること。始める時ってみんな意気揚々じゃないですか。

トリハル: そうそう(笑) ホントそうですよね。

寺沢: 意気揚々のまま終わらせられるのが一番ですけど、そうじゃなくても途中休んじゃっても、ちゃんと終わらせたよってのは大事だと思うんです。

トリハル: 最初に決めた終わりまでは描こうかなぁって。やりたかったエピソードは描きましたね。

寺沢: それは結構すごいことですよね。仕事じゃないことでやりたかったことを終わらせるって。

トリハル: よく出版社の人が待っていてくれたなぁって(笑) そんなに売れた本でもなかったし(笑)

寺沢: 前回のように本が出たら(ブログを)閉じるんですか?

トリハル: 今度は閉じないです。出版の方も反省したらしく、そういうことじゃなかったんだと。

トーキョー無職日記

トーキョー無職日記 – トリバタケハルノブ

前回出版時には収録元のむつみ荘101号室のブログを一旦クローズした。
若干、色々あった。
今は再オープンしているので、是非、単行本と見比べてみてもらいたい。


寺沢: (トーキョー無職日記の頃は)手探りな所もあったんですか?

トリハル: ブログを読んでいたファンが(ブログが)読めないから買うんじゃなくて、描いている人を応援しようと思って買うし、読み切りとかそういうのがあれば買ってくれるんだと。(トーキョー無職日記が出た)その後で何冊か同じタイプの本が出て、そう思ったみたいなんです。なので今回は必ず読み切りを描いてくれと。

寺沢: プラスアルファを付けて出すと。

トリハル: 読み切りはちょっとキツかったです。

寺沢: 24ページでしたっけ?

トリハル: 24ページで、4コマじゃなく普通のマンガなので、話自体はそんなに複雑じゃないんですが。

寺沢: 4コマじゃないから逆に新鮮かもですね。

トリハル: そう思って読んでもらえれば良いんですけど「4コマじゃないのか!」と思われたら困るので、早めに4コマで無いことをお知らせしないとと思ってるんですけど(笑) 4コマで24ページだと読み応えあるじゃないですか。普通のマンガだと割りとすぐ読み終わっちゃうんですよ。一応、何回も読み返せる細かい仕掛けはしたんですけど。

寺沢: おー。

トリハル: そうだ、初稿が来たんで、今日持ってくればよかったかな。

寺沢: いえいえ、出てからの楽しみにしますから。

トリハル: 結構なミスを何回かしていて。バスが右側走ってるとか(笑)

寺沢: あー(笑)

トリハル: 全然右と左がわかんないんで、イラストでもしょっちゅうやっちゃうんですけど、「鉛筆を左で持ってるんですけど」って言われたり。

寺沢: 手が逆!

トリハル: 割とやっちゃうんですね。あと(ハルオが)自転車のサドルが取られて、最後の方でサドルのアップが出てくるんですけど、途中でサドル思いっきり描いちゃてて。

寺沢: 気づかなかった!

トリハル: 一箇所描いちゃったんですよ。すごい気をつけて立ち漕ぎで描いていたんですけど、普通に(サドルに)座っている画を描いちゃって。

寺沢: そうだ、今度サドルの所にブロッコリー刺した自転車を漕ぐトリハルさんを撮りましょうよ(笑)

トリハル: (笑)

マンガにズブズブはまっていく

寺沢: 国民健康保険のくだりは凄い記憶に残ってます。ズシンときました。あれは忘れられないです。

トリハル: あれは僕もびっくりしましたね(笑)

寺沢: ギャグにしてもすごいなーって(笑)

トリハル: あれがなければマンガ描いてないんで。大学生のそういう時って自分の中に物語が始まるのを待っている感覚があって。「なんだこのつまらない平凡な人生は!こんなはずはない!」って思ってたんで。大学に馴染めなくて行けなくなってやめたいと思う一方で、何か起こらないかなぁってずっと思ってて、そういう時に、そういうことがあって。マンガに出てくるほど、ゴリゴリのホームレスじゃなかったですけど、その時に「キタ!」って思ったんです。俺にもこの時がって。トーキョー無職日記ではすぐ辞める決断をするんですけど、そのあたりから何かが始まるっていう感覚があったんです。

寺沢: なかなか大事なキッカケですね。

トリハル: マンガを描くような人は浮浪者に話しかけられたりしてるようですね。福満しげゆきさんの漫画でも出てくるらしいんです。何かあるのかなって。

寺沢: あずまひでおさんは、なってますね(笑)

トリハル: あー(笑) あずま先生は東京に出てきてすごい模写したんです。かわいい女の子描けなくて。「ふたりと五人」を古本屋で見つけて、この画いいなぁって思って。なので失踪日記を読むことになるとは思いませんでした。びっくりしました。

失踪日記

失踪日記 – 吾妻 ひでお

まさかそんなことになっていたとは!という衝撃の走った作品。
やけにリアルな、そして、何とかなるんだなと思わせる内容。
こちらは本当に実録マンガになっている、らしい。


トリハル: マンガをまがりなりにも描いて、楽しさにズブズブはまっていく感じが分かるんですよ。歳をとって始めたことでもあるので、なんとなく「ここまでだろうな」っていうのが分かるんですよ。今は家族もいるし、そこで調子にのってハマるわけにはいかないなっていう。

寺沢: 難しいところではありますよね。マンガを描くというのは手間がかかるから、やっぱり若いウチというか。

トリハル: それは本当にそうですね。だから4コママンガという形でしかやれてなかっただろうなって思いますね。画を細かく描いていくと、たとえば電話の位置であったりとか、机があの時と違うとか、ものすごく目立ってくるので。六畳の部屋はこんなに広くないとか。うまくなりそうになると「やばいやばい」みたいなことはありますね。

寺沢: 際限がなくなっていく感じ。

トリハル: そうそう。もうちょっとゆるい画にしておかないとって思いましたね。ノイズをいれないことをに苦労しているというのが描くとすごい分かって、ホントちょっと気になるところがあると話から離れちゃうんですよね。さっきと服が違う!とか。素人が簡単に手を出していいもんじゃないなって思いましたね。

寺沢: でも、それを続けて終わらせたんだから立派ですよ!

トリハル: いやー、やっぱりメインの仕事にするのは難しいですよ。割合を増やしたいなって思うことはありますけど。メインではなかなか。
 


 
ということで1回目はここまで。まだ読み切りがどんな内容か現時点でも分からないので興味津々。トーキョー自立日記、発売は7月6日(土)。

また期間限定で7月末まで「トーキョー無職日記」のAndroid版が無料公開中とのこと。

こちらもよかったらチェックしてみてください。

次回は、トーキョー自立日記に登場するキャラクターの話などを伺います。
 
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