かなくらひだりさんと新宿でmixiについて話をした2011-11-03

かなくらひだりさんと新宿でmixiについて話をした

前の記事を読み返してみると

mixiがスタートしたばっかりの頃、招待されて入ったら当時知り合った人達が大勢いて、同窓会みたいでした。98年度生みたいな感じで。
(トリバタケハルノブさんとお話した その2)

当時mixiが面白くして仕方がなかったので、イベントが本決まりになった翌日か翌々日くらいに、勝手にフライヤーのイメージを作ってオーガナイザーに送ったりしました。
(かなくらひだりさんと玉川珈琲倶楽部でコーヒー)

なんて話があり、過去のmixi体験というものは、きっと多くの人に影響を与えているんだろうと感じた。
今の状況を見ると、今ではTwitterFacebookなどがあり、mixiそのものも往時の雰囲気とはだいぶ違っている。
ということで、そんな話を前回に引き続き、かなくらひだりさんと話してみた。

場所は前回の玉川学園前から小田急線で一本、新宿にあるBrooklyn Parlor
記事の掲載はこんな秋深い時期になってしまったけれど、実際にお話をしたのは7月半ばのことです。

ひだりさんが真剣に資料を作る

ひだり:結構真剣に考えてみたので資料を作ってきました。
結構真剣に考えてみたので資料を作ってきました。
てらさわ:こ、これはスゴイね。

ひだり:今、たぶん、こういう状況なんじゃないかな、という観点で眺めてみたものをまとめてみました。作り始めたら色々考えてしまって。

どうしてこうなった

ひだり:まず、どうしてこうなった、と。「こうなった」というのが何を指すのかは人それぞれかと思いますが(笑)
ヘビーユーザー的には新機能を追加して、すぐやめてみたりとか、「あしあと」が無くなったりといった「これはmixiで無いみたい」といった動きは何だったんだろうと。それをまとめてみるとこんなかなぁと。

どうしてこうなった

ひだりさんのまとめた資料は雑談するために作られたとは
とてもじゃないけれど思えないくらいに立派なものでした。
二人で座った席では資料を全部広げられなかったくらい。

全部の資料を見てみたいという方は、mixiでひだりさんを探して
コンタクトを取って見ることをおすすめします。

玉川学園前コミュニティの管理人がヒントです。


ひだり:今のmixiの状態というのは、色々な方角から攻められていて、どうしよう…と困惑している印象がすごく強いです。今回調べてみて余計にそう思いました。
大きな転換点は、ユーザー増が鈍った2009年から2010年にかけてです。2010年3月に招待枠を終了して、Gmailと連携なんかを始めました。誰にメリットがあるんだなんて言われたりしてましたが(笑)

てらさわ:Facebookにもある機能を真似した感じだったね。

ひだり:その影響もあると思うのですが、おそらくmixiの使い方を変えようという為に、試行錯誤していたんじゃないかなという印象です。Twitterを取り込んでみたりとか。
国内では『SNS=ユーザーの囲い込み』が常識だったのですが、FacebookTwitterもオープンソーシャルにしちゃおうという考えに基づいているわけです。
囲い込んで箱の中で勝負するという場合、モバゲーが収益率を一番持っているんです。ゲームコンテンツから利益を稼いでいる。その状況にSNSという形式で勝負するmixiは難しい。

てらさわ:なるほど。

ひだり:Facebookは2009年にMyspaceを抜いて世界最大のSNSになっていて、その核になっていたのがFacebookコネクトやファンページ、ソーシャルグラフを公開するという手段なんです。
mixiもクローズから、同じようにオープンWEBへスタイルを変えていっているんですね。GmailTwitterとの連携やmixi meetup 2010でのソーシャルグラフの表明やmixiチェックの発表なんかがそうです。

てらさわ:mixiチェックも、Facebookのイイネ!そのものだしね。

ひだり:そうやってクローズからオープンに移行しようとしているんだけど、今までのmixiユーザーがそれを求めているのかというと、ちょっと疑問なところがあって。

てらさわ:今まで学校の部室だと思って仲間で溜まっていたところが、気づいたら公共スペースになっていた、と。

ひだり:部室の壁をとっぱらおうとする一方で、壁を残したいという要求もあって、そこで衝突が起きているのでは無いかと思います。

モバゲーという存在

ひだり:話は前後しますが、mixiの収益構造をちょっと調べてみたんです。有価証券報告書を見ると…

てらさわ:そこまで頼んでないのに、頑張って調べましたね(笑)

ひだり:要約すると、「ザ・ニッポン」な広告収入の形態なんです(笑) 日本で最初の巨大SNSだったからこそだと思うのですが、Yahoo! JAPANに近いモデルです。広告ポータルベースの収益構造。
一方でモバゲーGREEは、ゲーム課金があるので、広告ARPUよりも会員ARPUが大きく、mixiの収益モデルはそれに比べたら効率が悪いんです。
モバゲーは広告なくても良いんじゃないかと思うくらいユーザー課金で成立しています。

てらさわ:実際そうだね。ゲームの方がお金直接入るもの。

ひだり:mixiは今までの良さをあたためつつ広告収益構造を作ってきたのだけど、効率が良くない。
たらればですが、あのまま変えずにいたら、それはそれで続いていけたかも知れないのですが、モバゲーなどが実績として収益を追い抜いてしまったから、どうしよう…と。

てらさわ:株主なんかからしたら、そういう判断になっちゃうだろうしね。

ひだり:一方でFacebookが世界最大になっていて、英語圏ユーザーのスケールメリットがあるから、同じ広告モデルだとしても桁が違う。
mixiは中国をターゲットにしてアジア戦略を考えているようです。英語圏はFacebookが多数をしめていますから。

てらさわ:ブルーオーシャンを求めているわけだ。

ひだり:モバゲーは会員モデルを中心に、SNSとしての機能もあるのですが、収益のエンジンはあくまでゲーム。
競合はFacebookのアプリゲームやiPhoneのアプリやゲームセンターといったもの。国内ではケータイユーザーを中心とした若年層を対象としていますが、海外でもゲームコンテンツとして展開することは可能なわけです。
mixiのことを調べていたのに、モバゲーのことばっかりに目が行くような凄さです。

てらさわ:なるほど。

イノベーションのジレンマ

ひだり:クレイトン・クリステンセンが1997年に提唱した「イノベーションのジレンマ」という言葉があります。
ブレイクしたサービスをブラッシュアップしていく。メジャーになった所は改修、改善をしていくのですが、根本を覆すことは出来ない。持続的なイノベーションになって行き、ある段階でユーザーのニーズを超えてしまう。おなかいっぱいになってしまう。

てらさわ:これは色々なサービスに言えることだね。

ひだり:既存のやり方に対応している間に、他所から破壊的なイノベーション、新しいアイデアが出てくる。そうすると、そっちが面白いということで人が流れていく。

てらさわ:そうなる今までのサービスが「オワコン」になってしまうわけだ。

ひだり:mixiがこうなったのは、ここまで話したことが全てではないですけど、国内最大SNSだけど売上げが思うように伸びなくて、イノベーションし続けないといけなくなったのではないかと思うんですね。
mixiがユーザーに還元できないような機能変更を続けていくというのは、そういう意味では正しいんだよねという結論に行き着くわけです。
良くも悪くも最初にメジャーになったことが長所であり短所でもある。

てらさわ:なるほど。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき
(Harvard business school press)

クレイトン・クリステンセン (著)
玉田 俊平太 (監修)
伊豆原 弓 (翻訳)

mixiが出来るずっと前、1997年に提唱されているという点、ひだりさんはとても驚き
そして感動していました。


がんばれmixi

ひだり:でも、WEBディレクターとしての目で見ると、スマートフォン版のmixiはリアルタイムつぶやきサイトとしてはそんなに悪くないんですね。instagramみたいにシンプルにつぶやいていけて、何かあればmixi特有の赤色で注目させるという基本ロジックは使っていて、いい塩梅に落とし込めていると思うんです。
ですけど、当時からmixiを使っていて、今はTwitterに流れているようなユーザーにとっては、期待しているのがそっちでは無い。だから色々言われる。

てらさわ:確かにそうだね。ニーズにあっているかという根本的な問題があるという。

ひだり:mixiで何をやっていたかと言うと、ほとんど全部が出来たんですね。
非公開コミュニティで会議をして、公開コミュニティで色々な人が集まって、情報を宣伝して、メッセージで個別にやりとりをして、日記を読んで今の状況を知ったり、反応を見ることが出来た。全部が出来たんです。実際、仕事でmixi使ってましたし。

てらさわ:「みんな」が頻繁に使っていた頃は確かにそうだったよね。

ひだり:今は「mixiに書きました」とTwitterでリンクつけてつぶやいたりしますし。

てらさわ:(笑)

ひだり:どうしてmixiに惹かれたのだろうと考えると
・同じ趣味趣向の人と出会える
・情報の交換がしやすい
・自分が書いた日記にコメントがもらえる
・誰が自分の所を見に来たかわかる
これらがSNSに感じていた面白さだったのかも知れません。お金関係なく、有志の人が集まるサイトであったわけだし。そこで友人も増え、人生にも影響している。誰かと話がしたかった、遊びたかった。そういう社交場だったわけです。その面白さがあったから、今の状況とのズレが起きているのではないかと。
ネット上でも、Amazonではお金を使おうと思うけれど、mixiではそう思わないわけです。

てらさわ:目的意識が違うものね。
勢いがあった頃、マイミクという繋がりを信用として利用した、物々交換サービスやオークションを始めるかなぁって思っていたんだけど、結局そういう方向には行かなかった。

ひだり:今からやっても遅くは無いのでしょうけど、コミュニケーション体験の仕方が変わってしまったので厳しいかも知れません。SNSのあり方が変わってしまって、コミュニケーション基盤としてのmixiは遠のいてしまいました。
それでも、そんなmixiが大好きです(笑)

てらさわ:そういう風にまとめるわけだ。

がんばれmixi

そこまで頼んでいない12ページにも及ぶ資料を
熱くプレゼンテーションした、さすがのひだりさん。
最後は外見どおり丸く収めてくれました。
ありがとうございました。

このインタビューの後、miximixiページをスタートして
よりFacebookみたいになったなぁという印象です。
一方で、モバゲーはプロ野球チームに手をだしていたり
この時はちっとも思ってもいなかった状況になっています。
3ヶ月手元で温めた話ですが、その間にも状況が進んでいて
本当にドッグイヤーなんだなぁと思うばかりです。