越智弘二さんと福島の話をした2011-12-31
映画情報サイト ミニパラ を運営している越智弘二さんと、福島についての話をした。
越智さんは震災後、定期的に福島へ行き、現地の状況をビデオカメラに納め続けている。話を聞いたのは7月末なのだけど、それから5ヶ月近く経った現在でも同じように活動を続けている。
撮影した映像はYouTubeで配信している。
福島は広い
越智:この前初めて軽自動車のレンタカーで取材に行ったんです。今まではキャンペーンで安い普通自動車があったのですが、それが無くて。軽は加速が全然違うなと思って。
福島で東西を行き来すると山道を通るんです、相馬や南相馬、飯舘行く時など。飯舘は山の上ですし。先頭を走ると後ろからかなり煽られるんです。軽だから、加速がつかない(笑)。
南北には太い道があるんです。
寺沢:高速道路も通っているし。
越智:中通りは4号線があって、そこを見つけてから高速道路は通らないで、 須賀川から福島市ぐらいの間は、そっちを走っても全然問題ない。
越智:浜通りにも途中で止まっていますけれど同じようにあるんです。いわきからいけるところ。そこも山道じゃないと思うんですけど。
ただ東西に行く時には、すごい山を通る。上りも下りもグルグル回る。
この前、相馬に行ってから福島市のホテルに帰った時、夜になっちゃって暗くて怖いから余計にスピード出したくないんです。一回途中で止まりました。
寺沢:後ろの人、お先にどうぞと(笑)
越智:精神的に疲れて(笑)
寺沢:片側一車線なんですよね?
越智:片側一車線でグルグル回っているのでカーブの先が見えないんです。そこはスピード出して行きたくないです。後ろの人は普段から走っていて慣れているのかも知れないけれど(笑)
寺沢:そこはスピード落とさなくたって平気なのに!(笑)
日曜日の炊き出しの風景
越智:この前、南三陸に行った時に炊き出しをやっていたんですけど、あんまりすぐに避難所にいる人達が出て来ないんです。お昼でジャージャー麺だったんですけど。
避難所から食べに来た人は数人しか見なかったんです。高校の体育館が避難所になっていたところなので、部活なんかに来ていた高校生やスタッフの人が食べていたりしていたんですけど。あんまり避難所にいる人達が大挙してという状況じゃなかったんです。
寺沢:でも食べているんですよね?
越智:時間的なこともあると思うんですけど。5月に福島市で一番大きいとされている避難所に行った時、総合運動場の体育館だったんですが、ちょうど夕食前で「ご飯配ります」って言ったら皆が行列していたから、そのくらいくるのかなと思ったんですけど。
仮設に移ったりして人数が少なくなっているというのもあるでしょうし。日曜日だったというのも若干あるらしいです。出かけたりして。
寺沢:あー。
越智:あんまり炊き出しの意味が薄れているような微妙な空気なんですが…。
寺沢:報道されている「避難所」「炊き出し」で想像される映像からは、かけ離れてる風景ですね。
越智:炊き出しのチームは東京から毎週来てる学生中心の人達だったです。
寺沢:今日はちょっと失敗だなーみたいなこと言ってたりしました?
越智:それは言わないと思うし、毎週来ているから大体は予想しているんじゃないですかね。
3Kの仮設住宅
越智:先週行った飯舘村で農業をやっているお父さんはすごいポジティブでブルーベリーもらったりしたんです。「もう子供いらないよな?」って確認されてから(笑)
寺沢:一応確認してから(笑)
越智:知り合いの人が飯舘村で作っているもので、今年は売れないからということで、もらったんです。木の実は根が深いからまだ放射性物質は来てない。実際、検査しても深いところには出てないし、木の実からも検査では出てないそうなんで。
お父さんは、相馬市にいるんですけど、飯舘村の人は福島市の避難所が多いようです。福島市に仮の役場を作っているから、そっちに行ってもらいたい、みたいなことがあるようなんで。
寺沢:自治体機能がそっちに移った感じですね。
越智:お父さんが言うには、相馬の方に行ったのは、そっちの方が仕事があるんじゃないかということで選んだそうなんです。
寺沢:仕事というのは?建築関係とか?
越智:それもあるでしょうし、瓦礫の撤去とか。
寺沢:地元の人もそうやって働き口を探して移動しているんですね。
越智:そういうポジティブなお父さんだったので、飯舘村=みんなが泣いている みたいな人ばかりでも無いよと。仮設に住んでいる息子さんの話だと飯舘村でも買い物の時は割りと遠い所にいかないといけなかったら、まだこっちの方が良いですよみたいな。新築できれいだし(笑)
今回はあんまり話が聞けなかったので、また話を聞こうと思うのですが、この前も泊まっていけと言われたんです。
寺沢:仮設に?
越智:そうそう(笑) 寝袋あるよって言われて(笑) ホテル予約とってたので帰りましたけど、今度は泊りがけで行こうかなと思ってます。
仮設と言ってもそんな狭くないんですよ。そこは3Kで、お父さんと息子さんと娘さんの3人。
寺沢:3Kの仮設とか、あんまり紹介されないですよね。
越智:割りと広いんですよ。他所の人が泊りに行ってもOKなくらいな感じです。
寺沢:もともと大きい家に住んでいた人も大勢いたでしょうからね。
越智:東京でアパート住まいよりも全然広くてオッケーです。
寺沢:言われてみればそうですね。
Twitterを使って交渉
寺沢:次はいついくのですか?
越智:来月です。1ヶ月に1回はノルマにしようと思っていて。今月2回行ったのは、レンタカーの安いキャンペーンがあったんですよ。24時間2000円くらいで。安いので48時間までだったですけど。
寺沢:なるほど。
越智:来月は郡山の方に行ってみようと思います。福島県の南側の地域に行く可能性もあるので。何となく交渉の仕方もわかって来て、バーっといくつか出して日程のあったところに行こうかと。
mixiも多いですけど、Twitterからが多いですね。Twitterはフォローしてフォロー返してで、そこでプロフィールにどこに住んでいるか分かる人もいるので。それでダイレクトメッセージを送って。
なるべく色々な地域の人のところに行きたいです。避難区域も解除されたりしたら、これまで行けなかったところにもいけるので。
色んな立場
越智:色々な人に会いたいのはありますね。それはそれで楽しみであるところです。
なんでもそうだと思うのですが、やれる人、やりたい人、やる気になる人がやれば良いと思うんですよ。支援するにしたって、別にやれば必ず偉いという訳でもないですし、やりたくない人はそれで良いと思うんです。
寺沢:やらない言い訳を探す感じは切ないと言うか。
越智:そうそう。極端にそれが出ているのが子供を避難させる問題じゃないですか。
すぐに避難できる家ばかりじゃないし、家族の中で相談して決めたとしても遅かったかも知れないと思うこともある。避難させたい気持ちもあるけれど、相談した結果、留まりますという選択をしたご夫婦もいる。「避難する勇気」と言っていましたけれど。
寺沢:勇気というのとはちょっと違うような。
越智:言いましたけどね。色んな立場があるから、その立場の中で一生懸命やれることをやればいいんじゃないですか?と。立場や考え方があるじゃないですか。パッと考えられる人もいればゆっくりな人もいる。
取材した伊達のお父さんは、データを自分で収集して自分で考えるという人で線量計で色んなところを自分で測って、自分で除染もするような人で、それはそれでご自分の選択のわけです。それを他と比べられるということでは無いと思うんですよ。
子供だって避難したところで、友達の問題とかあるわけですし。
寺沢:そういうことを今までは考えないで生活出来ていたのが、それが出来なくなってしまったということですよね。
考えないで済むところまで社会が出来ていて、それはとても幸せなことだったのかも知れないけれど、残念ながら今はそうでは無くなってしまったと。面倒くさくなったけど、仕方がない。
越智:仕方がないですよね。
寺沢:そういうことがハッキリ言えるようになったことは前進なのかも知れないですね。