再起動せよと雑誌はいう2012-01-11
年末年始に一冊の本を読んだ。
仲俣 暁生 著
京阪神Lマガジン社
Meets Regional誌で連載されていた雑誌評に対談やコラムを追加し再構成されたもの。
1つの雑誌について3ページ程度の内容となっていて、ちょいちょい目を通せる感じは
一冊の本でありながら、それこそ雑誌をパラパラとめくる感覚に近い。
「都市文化生活」というこのサイトの名称は「都市、文化、生活」「都市文化、生活」それとも「都市、文化生活」のどれなのか、よくわからない感じが気に入っている。
それぞれの言葉には雑誌が元気だった頃の残り香が漂っていると思う。今はもう殆ど無くなってしまったけれど、確かにそれは過去に存在していて、今だって本当はあるのだけど見えにくくなってしまっている何か。
出版元の京阪神Lマガジン社は名前の通り関西の出版社で情報誌やムックを主に出版している。東京でもムック本はかなり売れているらしいので目にすることは多い。
―街なかのひとりごはんを解決! (えるまがMOOK ミーツ・リージョナル別冊 東京篇)
京阪神エルマガジン社
Meets Regional誌の別冊として出版されているムック本。
関東では関東向けのムックが中心で出回っていると思われるけれど
探せば関西向けも手に入る。というか、そもそもネットで買える。
東京の雑誌には無い視点や肌触りで作られる誌面は、内容が東京のものであっても、どこか違う場所を紹介しているような空気が漂っていて、そこにある情報を消費するだけでは勿体無い、読むこと、見ることが楽しいと感じられるものがある。
旅行へ行くと、その土地の情報に触れたくなる。テレビなら天気予報を必ず見る。コンビニや本屋では情報誌と求人誌を見る。そこに住んでいる人が普段触れている情報を意識することで、その土地の空気をより深く感じられた気になる。エルマガジンやMeets Regionalもそうやって出会った。
ページを開くと、まったく知らない、どうやって行っていいかもわからない土地の情報が、その土地の人向けに提供されている。自分が余所者であることが際立つ瞬間であり、その土地の人の気分を勝手に体験した気になる瞬間でもある。
わざわざバックナンバーを載せたのは北摂(大阪の地域)特集号だから。
知らない人は全然知らない地名がドンドン出てくる。
バックナンバーのページはまだ残っていた。
自分はこの雑誌のこういう部分に惚れている。出来れば一度手にとって見てもらいたい。
関東の雑誌と一番違うと感じている部分は笑顔だ。出てくる人が本当によく笑っている。ニコニコしている。それは編集方針なのか土地柄なのかわからないけれど、とにかく出てくる人が朗らかだ。ページを開くだけでハッピーになる。クールに決めるばっかりが格好良いわけじゃない。
東京でも別冊のムック本が売れているのであれば、同じような方針の雑誌が東京にだってあっても良いようなものなのだけど、相当するものが見当たらない。地域によって、好みや気質だけでなく、経済の問題なんかで成立しないのかも知れない。
そう思うと、東京という都市は何でもあるように思えて、実際には無いものだってあるといえる。
ちなみにMeets Regionalは東京の書店でも置いてあるところはある。探せば結構あるけれど、ムック本に比べたら見つけにくくて、それもまた興味深い。